学生を終え、駆け出しデザイナーになったときの壁[後編]

前編に続き後編です……!

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学生のときの「理想」が現場では通用しなかった

私は大学でデザインを勉強したわけですが、大学って職業訓練校ではないんですよね。デザインの実習をする授業もたくさんあるとはいえ、実際は「デザインに対する考え方・思想」を学ぶためのような機関です。

で、周りの友人たちや教授と理想を語り合ったりしたわけです。「やっぱりデザインは上品であるべきで、余白は絶対に必要だよね」「広告を作るときは、まずキャッチコピーから考えて、ビジュアルはコピーの説明にならないようにしましょう」「文字にグラデーションを付けたり縁取りを付けたりするのは良くないよね」等々……。

現場に出ると、そうはなっていませんでした。どこの会社であっても、学生のとき考えた理想のような場所にはなっていません。私は新人時代、あまりに考え方が不器用すぎて、そういった現実にあらがおうとしていました。うまくいかないですよね、これ。「新人は言われたことをスポンジのように吸収できるひとが良い」と言われる理由もよくわかります。なので、いったん理想は横に置きました。

でも、何年もデザイナーを続けて、その現場の現場なりの理由を含めて多くのことが俯瞰で見られるようになった今「やっぱり学生時代に学んだことは大事だな」と思えます。そこで学んだ理想が、今になって役に立っています。よく「それは理想論だ」なんて言うけど、理想を持ち続けることは大事なのだと思います。そしてやはり、学生時代〜新人時代の知識や考え方はまだ浅く、それをアップデートさせてようやく使えるレベルだなあと思います。

なにもわからない中、会社が「育ててくれた」

上に書いてきた壁はあくまで一部に過ぎず、振り返ればもっともっとあるはず。それまでアルバイトの経験もなく、〈働くこと〉に対する意識も低かった自分は、もう本当に「なにも分からなかった。なにが分からないかすら分からなかったレベル」からスタートしました。分からなすぎて質問をしすぎて注意されることもよくありました。

そんなメチャクチャだった私を、会社の先輩方は見放さずにいてくれたわけで、とても感謝をしています。優しくも厳しくも指導してくださり「わ! こんな先輩になりたい!」とよく思いました。

デザイナーを続けている理由

弊社でも8年以上デザイナーを続けているし、多分これからもデザイナーを続けるのでしょう。それはこの仕事がとっても楽しいからに他なりません。幼いころから「文字情報のある紙面を作ること」に憧れ、小学生のときに家電量販店でPageMaker(という、InDesignみたいなソフトが昔あったのです)のパッケージを見ては、「このソフト使ってみたいな〜!」と思っていたような自分が、実際、InDesignばかり扱う仕事に就くことができたのは、ありがたいことです。

全然できない……という期間が、おおよそ3〜4年くらいは続いたわけですが、ある時期から急にコツが分かって、デザイン案が浮かびやすくなりました。「デッサンも急に出来るようになる日がある」と言われますが、まさにそんな感じ。いまこの記事を書くために「デザイナー 新人 苦労」とかのワードで他記事を調べていたら「ある日、霧が晴れるように〈見える〉ようになりますよ!」と書いている人がいて、みんな同じなのだなと思いました。

で、わたしはどうなんだ

……「育ててくれました」とか偉そうに書きつつ、じゃあ育てられた結果の私はそんなにすごいのかと言われたら、もう本当に申し訳ないですというしかありません。

なにか作って「うまくいった! これは自信作!」と思っても、ちょっと時を経てから見返すと「なんだこれ、全然できてないじゃん」「垢抜けない、ダサいじゃん」というのをもうずっと繰り返しています。たぶん、その焦りは一生持ち続けるのでしょう。毎日毎日、知識も技術もアップデートしていかなくてはなりません。ただ終わりがないのが楽しいというか、毎回なにか作るたびに発見があり、そのとき取り組む課題があるのが、この仕事の醍醐味なのです。

この記事ではネガティブなことばかり書いてしまいましたが、他の記事では「デザインの楽しさ」も、もっともっとお届けしていく予定です。みんな、デザイナーは楽しいよ!

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